ライフサイエンス産業のDX化【エンドレスハウザージャパン株式会社】
- 3 日前
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プロセスオートメーションにおいて
IO-Link テクノロジーを最大限に活用する方法
エグゼクティブサマリー
IO-Link は、信頼性とコスト効率に優れたシンプルな通信技術であり、特に基本的な測定や制御アプ リケーションに適しています。ただし、IO-Link には、帯域幅の制限、ポイント・トゥー・ポイント トポロジーや拡張性の制限など、固有の技術的制約があるため、すべてのユースケースに普遍的に利 用できるわけではありません。特にライフサイエンス産業のプロセスオートメーションでは、IOLink 機器の使用が付加価値をもたらす場合と、スタンドアロン技術としての IO-Link の使用が推奨さ れない場合があるので、これらを慎重に評価する必要があります。これは、柔軟性やデータスルー プットの向上、リアルタイム機能などが求められる、将来を見据えたデジタル化戦略を策定する場合 に特に重要となります。このホワイトペーパーでは、ライフサイエンス産業における IO-Link の利点 と制限事項、および補完的な通信技術を利用して IO-Link をより複雑なシステムに統合する方法など について包括的に説明します。
1.概要
プロセスオートメーションは、現代の産業施設の運用を支える基盤であり、効率、一貫性、品質を大 きく向上させています。メーカーは競争力を維持するためにオートメーション技術を活用して、シー ムレスな統合や信頼性の高い性能を確保し、今後の変化に適切に対応していく必要があります。IOLink は、そのような技術の 1 つであり、主に下層の市場のセンサ(計測機器とスイッチ)やアク チュエータ向けに設計されたシンプルでコスト効率の高い通信プロトコルとして、最初はファクト リーオートメーションに利用されていました。 しかし、オートメーションシステムの複雑化が進むにつれて、IO-Link だけでは、時間的制約があり高 性能なデータ集約型のプロセス環境のすべてのニーズに対応するのは難しくなっています。ほぼリア ルタイムの処理性能、データ帯域幅の向上、拡張性と柔軟性に優れたネットワークトポロジーなどが 必要となるアプリケーションの場合、IO-Link だけでは不十分です。また、重要な測定点では、高度な 通信プロトコルが必要な場合もあります。このような場合、完全な相互運用性、拡張性、リアルタイ ムの処理性能を確保するために、PROFINET、Modbus TCP、EtherNet/IP などのイーサネットベースの 通信プロトコルによって IO-Link を補完する必要があります。

2. ユースケース 1:細胞培養におけるバイオプロセス制御の最適化
このユースケースでは、IO-Link と PROFINET の通信技術を組み合わせて、重要なパラメータのリア ルタイムの監視と自動化により細胞培養におけるバイオプロセス制御を最適化し、これにより、プロ セスの効率、信頼性、製品歩留まりを向上させて、汚染のリスクを最小限に抑え、ダウンタイムを短 縮する方法を示しています。
2-1課題
バイオプロセス施設では、モノクローナル抗体やワクチンなどのバイオ医薬品を製造するために、哺 乳類細胞の培養を行っています。
プロセスでは、細胞成長と製品歩留まりを最大化するために、管理 条件下のバイオリアクタで細胞を培養しています。主な工程を以下に示します。
接種:細胞をバイオリアクタに投入します。
成長フェーズ:管理条件下で細胞を成長および分裂させます。
生成フェーズ:細胞が目的の生成物(抗体やタンパク質など)を生成します。
収集:細胞を培地から分離して生成物を収集します。
精製:収集した生成物を精製し、最終製品であるバイオ医薬品を製造します。

これらの各工程では、pH、温度、溶存酸素/養分濃度などの環境パラメータの正確な監視と制御が極 めて重要になります。
このため、一般に以下のフィールド機器が使用されます。
温度伝送器:バイオリアクタ内の温度の監視に使用されます。
pH センサ:酸性度の監視に使用されます。
溶存酸素センサ:酸素濃度の追跡に使用されます。
グルコースセンサ:養分レベルの監視に使用されます。
2-2 ソリューション
PROFINET と IO-Link を使用することで、バイオプロセス施設はプロセスを自動化し、データをリア ルタイムで監視して、細胞培養プロセス全体を通して適切な条件を確保できます。
バイオプロセス制御における PROFINET
PROFINET は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)と SCADA システム間の高速通信を可能 にし、細胞培養プロセスに使用される計測機器、ポンプ、バルブなどの機器をシームレスに統合でき ます。また、PROFINET では、バイオリアクタ内の温度、pH、酸素レベルなどの変数の調整/制御に 不可欠な大量のデータをリアルタイムで交換できます。さらに、PROFINET は、障害発生時でも通信 を継続できるネットワーク冗長化に対応しており、これは、通信の中断が貴重な製品の損失や汚染リ スクを引き起こす可能性のあるバイオプロセスでは不可欠な機能です。バイオプロセス施設では、 PROFINET を使用してフィールド機器を中央の PLC や SCADA システムに接続します。高速ネット ワークにより、バイオリアクタが離れた場所にある場合でも機器間のリアルタイム通信が確保され、 システム全体の統合と自動化を促進できます。
バイオプロセス制御における IO-Link
IO-Link を使用すると、さまざまなスマートセンサを接続できるようになり、リアルタイムのフィー ドバックを提供して、プロセスの自動調整が可能になります。IO-Link 機器は高精度の測定値を提供 するため、最適な細胞成長条件の確保に不可欠である重要なバイオリアクタパラメータを正確に制御 できます。さらに、IO-Link ではセンサの状態、校正、診断のリモート監視が可能であり、バイオプ ロセスに影響が及ぶ前にオペレータが問題に対処できるため、ダウンタイムを短縮して運転効率を向 上させることができます。IO-Link マスタは IO-Link センサと統合されており、シームレスな通信と PLC へのリアルタイムのデータフィードバックが可能なため、バイオリアクタの状態を適切に管理で きます。
2-3 結果
PROFINET と IO-Link の通信技術を組み合わせることで、細胞培養におけるバイオプロセス制御を効 率化し、信頼性を高め、コスト効率を向上させることができます。これらの通信技術により、リアル タイムの監視、リモート診断、正確な制御、予知保全が可能になり、細胞培養プロセス全体を通して 最適な成長条件を確保できます。効率の向上、ダウンタイムの短縮、製品品質の向上により、バイオ 医薬品施設は運転コストとリスクを最小限に抑えながら、製造目標を達成できます。
リアルタイムの監視および制御
温度制御:IO-Link を介して接続された温度センサにより、バイオリアクタの内部温度を監視し て、細胞の最適な成長条件を確保できます。PLC はリアルタイムデータを受信して、PROFINET を介して加熱システムの温度を調整し、適正な設定値を維持します。温度がこの設定値から外れ た場合、加熱/冷却システムの調整といった是正措置がシステムにより自動的に実行されます。
pH 制御:IO-Link により統合された pH センサが、バイオリアクタ内の pH レベルの正確な測定値 を提供します。PLC は酸/塩基添加システムを調整して、pH を細胞成長に最適な範囲内に保ちま す。pH レベルが適正な範囲を外れた場合、アラームが作動して、システムにより必要な化学製 品が投与され、自動的に補正されます。
溶存酸素制御:IO-Link により統合された溶存酸素センサが、バイオリアクタ内の溶存酸素レベ ルを監視します。PLC はこのデータを使用して曝気システムを制御することで、酸素供給を調整 し、生成フェーズにおいて細胞呼吸に最適な溶存酸素レベルを確保します。
養分投与量の制御:IO-Link により統合されたグルコースセンサとその他の養分レベルセンサ が、バイオリアクタ内の養分濃度を継続的に監視します。PLC はリアルタイムデータに基づい て、養分投与システムを調整し、最適な養分レベルを保持して細胞成長と生成物の生成に十分な 養分を確保します。
診断およびメンテナンス
機器診断:IO-Link センサは、運転ステータス、エラーメッセージ、摩耗指標などの診断情報を PLC に継続的に送信します。PLC は、センサと機器の状態を監視し、問題(例:センサの校正ド リフト、機器の機能不良など)が発生した場合にオペレータに警告メッセージを送信します。た とえば、pH センサの寿命が終わりに近づいている場合、システムからオペレータに交換のスケ ジュール設定を求める警告メッセージを送信できるため、計画外のダウンタイムを回避して、プ ロセスの一貫性を保持できます。
リモート設定および校正:IO-Link インタフェースにより、オペレータはリモートでセンサの設 定、校正設定の調整、プロセスパラメータの微調整などを実行できるため、現場での調整作業が 不要になります。この機能により、現場でのメンテナンス作業を減らして、作業時間の短縮と運 転の柔軟性向上を実現できます。
データ分析および最適化
高度なデータ分析:IO-Link センサのデータは集約され、PROFINET を介して SCADA システムに送 信されて、詳細な分析に使用されます。温度、pH、溶存酸素レベル、養分濃度に関する履歴データ を分析して、トレンドを特定し、将来に向けてバイオプロセスを最適化します。センサデータに基 づく予測分析により、オペレータは、センサやポンプのメンテナンスが必要となる時期の予測な ど、潜在的な問題を発生前に予測できます。
プロセスの最適化:PROFINET からのリアルタイムデータにより、バイオプロセスを動的に調整 できます。たとえば、溶存酸素レベルが低下した場合に曝気システムの自動調整を行うことや、 養分レベルが最適なレベルを外れた場合に投与システムの自動校正を行うことができます。この ようなリアルタイムの調整により、プロセスを最大限に効率化し、無駄を減らして歩留まりを向 上させることができます。
2-4 利点
効率の向上:温度、pH、溶存酸素、養分レベルのリアルタイムの監視と制御により、最適なバイ オプロセス条件を確保して、細胞培養プロセスの全体的な効率を向上させることができます。
ダウンタイムの短縮:継続的な診断とリモート設定により、現場作業を最小限に抑え、メンテナ ンス時間とダウンタイムを短縮できます。
コスト削減:効率的な養分投与、化学製品の使用量の最適化、エネルギー消費量の削減は、長期 的に見ればコスト削減につながります。
製品歩留まりの向上:重要なパラメータを正確に制御することで、製品品質を高め、歩留まりを 最大化できます。
拡張性:PROFINET と IO-Link の柔軟性と拡張性に優れたアーキテクチャにより、プロセスの規 模の拡大に合わせて新しいセンサや機器を容易に統合できるため、製造需要の増加に応じてシス テムを拡張できます。
3.ユースケース 2:医薬品製造における自動品質管理の最適化
このユースケースでは、IO-Link と PROFINET の通信技術を組み合わせて、重要な品質パラメータの リアルタイムの監視、正確な制御、自動化により、医薬品製造における自動品質管理を強化し、これ により、安定した製品品質、効率の向上、汚染や不良品のリスクの最小化、廃棄物の削減を実現する 方法を示しています。
3-1 課題
医薬品製造施設では、厳しい規制要件下で錠剤、ワクチン、注射剤などの医薬品を製造しています。 製造プロセスには、以下のようなさまざまな工程があります。
原料の調製:原薬(API)を前処理して添加剤と混ぜ合わせます。
製剤と調合:原料を組み合わせて医薬品を製造します。
造粒と圧縮:薬品混合物を錠剤または他の形に変換します。
充填と包装:医薬品をバイアル、ブリスターパック、瓶などに正確に充填して包装します。
品質管理と検査:製造された医薬品の効能、純度、外観、包装の完全性について、必要な基準を 満たしていることを確認します。
各工程では、継続的な監視とリアルタイムのデータ分析により、製造プロセスが厳格な品質基準と規 制基準を満たしていることを確認する必要があります。このため、一般に以下のフィールド機器が使 用されます。
湿度計:原料中の水分率や打錠成型時の水分率の監視/制御に使用されます。
温度伝送器:処理中や保管時に製品を規定の温度範囲内に保持するために使用されます。
粒子カウンター:クリーンルーム内の浮遊粒子を検出し、空気の品質が規制基準を満たしている ことを確認するために使用されます。
圧力伝送器:充填機や包装ラインの圧力監視に使用されます。
3-2 ソリューション
PROFINET と IO-Link は、継続的なデータ収集、正確な制御、自動化を可能にする変換器と機器を統 合することで理想的なソリューションを提供し、これにより、最終製品が必要な品質仕様を確実に満 たすことができます。
医薬品製造における PROFINET
PROFINET は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、SCADA システム、およびフィールド 機器(製造ラインで使用される計測機器、バルブ、コンベヤなど)間のシームレスな通信を可能にし ます。また、PROFINET では、機器間の高速データ交換が可能なため、温度、湿度、粒子数、圧力な どの製品の品質パラメータを継続的に監視/制御できます。さらに、PROFINET は冗長化にも対応し ており、ネットワーク障害が発生した場合でも、品質管理プロセスに不可欠な通信をそのまま継続で きます。これは、医薬品製造のミッションクリティカルなアプリケーションにおいて極めて重要な機 能です。製造施設では PROFINET を使用して、湿度計、粒子カウンター、温度コントローラ、圧力伝 送器などの重要な品質管理機器を中央の PLC および SCADA システムに接続しています。これによ り、環境と製造プロセスのリアルタイムの監視と正確な制御を実現できます。
医薬品製造における IO-Link
IO-Link により、さまざまなセンサを接続して、原料や最終製品の湿度、温度、粒子数、化学組成な どのパラメータを監視することで、リアルタイムのフィードバックと調整を行うことができます。 IO-Link センサは、打錠成型時の水分率やクリーンルーム内の浮遊粒子数などのパラメータを高精度 で測定できます。IO-Link により、リモートでのセンサの診断と設定が可能になり、現場作業を最小 限に抑え、ダウンタイムを短縮できます。オペレータは、リモートで設定の調整や機器の校正を実行 できるため、アクセスが困難な機器に手動でアクセスする必要がなくなります。IO-Link マスタはセ ンサを統合しており、データを PLC に返信して、製造環境に関する有益なデータをリアルタイムで 提供します。
3-3 結果
PROFINET と IO-Link を組み合わせることで、医薬品製造における品質管理の自動化と最適化のため の強力なソリューションが実現します。これらの通信技術により、リアルタイムの監視、リモート診 断、正確な制御、予知保全が可能になり、効率を高め、運転コストを削減しながら、製造プロセスに おける規制基準を確実に遵守できます。品質管理の強化、ダウンタイムの短縮、製品の一貫性の向上 により、医薬品製造施設は厳格な産業基準を遵守するとともに、高品質の製品を提供できます。
リアルタイムの監視および制御
環境制御(温度および湿度):IO-Link によって統合された温度センサと湿度センサが、製造エ リア(例:クリーンルーム、保管エリア)の環境条件を監視します。PLC はリアルタイムデータを 受信して HVAC システムを調整し、医薬品製造に最適な温度と湿度を維持します。環境パラメータ 値が事前定義された設定値から外れた場合、システムは直ちにアラームを作動し、是正措置(例: 温度/湿度制御の調整)が講じられます。
粒子の監視:IO-Link を介して接続された粒子カウンターにより、医薬品製造が行われるクリー ンルーム内の浮遊粒子数をリアルタイムで測定します。PLC はデータを継続的に監視し、粒子数が許容範囲内であることを確認することで汚染を防止します。粒子レベルが規制のしきい値を超 過した場合、システムでは空気ろ過の調整や緊急清浄化サイクルの開始といった是正措置が講じ られます。
充填および包装制御:IO-Link により接続された圧力センサが、製造の充填工程と包装工程で圧力 レベルを監視します。PLC は、充填機が最適な圧力で稼働していることを確認し、薬剤の正確な充 填により充填不足や過剰充填を防止します。圧力測定値が事前定義された範囲を外れた場合、シス テムでは製造ラインを停止することや、オペレータに充填機の調整を求める警告メッセージを送信 することができます。
原料中の水分および組成の監視:IO-Link により接続された水分率センサが、打錠成型に使用さ れる原料の水分レベルを監視し、最終製品の適正な一貫性を保証します。PLC は、製剤の調整や 添加剤の添加量の制御により、適正な水分レベルをリアルタイムで確保します。
診断およびメンテナンス
機器診断:IO-Link センサは、センサの状態、運転ステータス、潜在的な故障や機能不良に関する データなど、診断フィードバックを継続的に提供します。PLC はこのデータを追跡し、粒子カウン ターの校正が失われ始めた場合など、センサが摩耗や故障の兆候を示し始めたときにオペレータに 警告メッセージを送信します。メンテナンスに対するこの予防的なアプローチにより、計画外のダ ウンタイムを最小限に抑え、製造プロセスの中断を回避できます。
リモート設定および校正:オペレータは、IO-Link インタフェースを使用して、湿度センサの再 校正や粒子カウンターの設定値変更など、センサパラメータをリモートで調整できるため、現場 での機器の手動調整が不要になります。この機能により、ダウンタイムを短縮し、最適な性能を 確保して、運転の柔軟性を向上させることができます。
データ分析および最適化
高度なデータ分析:IO-Link センサのデータは、PROFINET を介して SCADA システムに送信さ れ、詳細な分析に使用されます。環境条件、粒子数、材料品質に関する履歴データを分析して、 製造プロセスのトレンドとパターンを特定します。このデータに基づいて予知保全および故障予 測モデルを構築することにより、オペレータは潜在的な障害に予防的に対処して、製造の中断を 回避できます。
プロセスの最適化:PROFINET からのリアルタイムデータにより、製造プロセス中の動的な調整 が可能になります。たとえば、打錠成型時の水分レベルが適正範囲を超えた場合、システムでは 製剤の自動調整や、ラインを停止して再校正を行うことで、製品の適正な品質を確保します。環 境条件、原料の処理、製品の一貫性の継続的な最適化により、医薬品製造を効率化して製品品質 を向上させることができます。
3-4 利点
製品品質の向上:環境条件、材料組成、粒子数のリアルタイムの監視と正確な制御により、各バッ チで必要な品質基準を確実に遵守できます。
効率の向上:継続的な診断、リモート設定、リアルタイムのデータ交換により、プロセス効率が 向上し、現場作業が減り、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
コスト削減:環境制御、水分レベル、材料の処理を最適化することで、材料の無駄な消費や手直 しを減らしてコストを大幅に削減できます。
法規制の遵守:品質管理の自動化により、FDA や EMA により定められた製造プロセスに関する 規制要件を確実に満たすことができます。これは、製薬産業にとって極めて重要な利点です。
拡張性:PROFINET と IO-Link の柔軟性と拡張性に優れたアーキテクチャにより、製造ニーズの 高まりに応じて追加のセンサや機器を統合できるため、製造施設の規模の拡大に合わせて品質管 理システムを拡張できます。
4.ユースケース 3:臨床試験用の自動ラボシステムの最適化
このユースケースでは、IO-Link と EtherNet/IP の通信技術を組み合わせて、重要なパラメータのリ アルタイムの監視、正確な制御、自動化により臨床試験における自動ラボシステムの効率と精度を高 め、ヒューマンエラーを減らし、ダウンタイムを最小限に抑えるとともに、高品質で信頼性の高い臨 床試験データを生成する方法を示しています。
4-1 課題
臨床試験では、管理環境下で新薬や治療法の厳格な試験を行い、その安全性、効能、有効性を評価し ます。臨床試験で使用されるラボシステムに対しては、GLP(Good Laboratory Practice)および FDA や EMA などが定める規制基準の厳守が求められます。一般に、このプロセスには以下のような工程 があります。
サンプル調製:抽出、処理、調合など、試験用サンプルの生物学的または化学的調製を行います。
試験分析:温度、湿度、試薬精度などの条件を監視しながら、実験と分析を実施して薬剤の有効 性を検証します。
サンプル保管:正確に管理された条件下でサンプルを保管します(例:生体サンプルの低温保管 など)。
データ収集とレポート生成:実験やセンサ/機器からリアルタイムのデータ収集を行い、その後、 レポートを生成して分析します。
結果検証:結果を管理基準と照合することで、結果の品質と一貫性を保証します。 このような環境では、データの整合性の確保、効率の向上、厳格な規制基準の遵守を保証するた めに自動化が不可欠です。このため、一般に以下のフィールド機器が使用されます。
温度伝送器と湿度計:冷凍装置や培養器内の環境条件の監視に使用されます。 • 液体ハンドリングロボット:正確なサンプル調製と分析に使用されます。
バーコードスキャナ:サンプル管理でのヒューマンエラーを減らすために、サンプル ID の追跡に 使用されます。
pH センサ:サンプルが試験に適した pH に維持されていることを確認するために使用されます。
4-2 ソリューション
EtherNet/IP と IO-Link により、リアルタイムの監視、正確な制御、診断機能を強化することで、ラ ボシステムの運転を効率化し、臨床試験に求められる高い基準を満たすことができます。
自動ラボシステムにおける EtherNet/IP
EtherNet/IP は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、SCADA システム、およびフィール ド機器(ラボ用機器、冷却装置、環境監視機器など)間のシームレスな通信を可能にします。さら に、EtherNet/IP は高速データ交換にも対応しているため、ラボシステムでは温度、湿度、サンプル 追跡などの重要なパラメータを最小限の遅延で監視/制御できます。EtherNet/IP はさまざまな機器を 接続でき、臨床試験の進捗やラボシステムの規模の拡大に応じて、センサや機器を追加して容易に拡 張できます。臨床試験用のラボシステムでは EtherNet/IP を使用して、冷凍装置、温度計、湿度計、 pH センサ、液体ハンドリングロボット、バーコードスキャナなどの重要な機器を接続します。 EtherNet/IP により、これらの機器と PLC または SCADA システム間のリアルタイム通信が可能にな り、ラボの状態を制御および監視できます。
自動ラボシステムにおける IO-Link
IO-Link は、さまざまなセンサや機器を中央の PLC または制御システムに接続し、分析用のリアルタ イムデータを提供します。また、IO-Link により、生体サンプルの保管に使用される冷却装置の温度 や、管理された環境チャンバ内の湿度レベルなど、重要なラボパラメータを正確に測定できます。オ ペレータは、IO-Link を使用して機器をリモートで設定および校正できるため、現場でのメンテナン ス作業を最小限に抑え、ヒューマンエラーを低減できます。IO-Link マスタはセンサを統合してお り、データを PLC に送信して、すべての接続機器のリアルタイムのステータス更新情報と診断情報 を提供します。
4-3 結果
臨床試験用の自動ラボシステムに EtherNet/IP と IO-Link を統合することで、ラボ運転の効率、精 度、信頼性を向上させるための堅牢なソリューションが実現します。これらの通信技術により、リア ルタイムの監視、自動制御、リモート診断が可能になるため、データの整合性を強化して、要件に準 拠した高品質な臨床試験結果を生成できます。自動化により、ヒューマンエラーを減らし、臨床試験 プロセスの速度を向上させて、リソース管理を最適化できるため、最終的には新しい医薬品治療を市 場投入するまでの期間を短縮できます。
リアルタイムの監視および制御
温度および湿度の制御:IO-Link により接続された温度センサにより、ワクチンや細胞培養など の生体サンプルを適正な温度で冷却装置や冷凍装置に保管できます。PLC は、EtherNet/IP を介し て冷却システムをリアルタイムで調整し、適正な温度範囲を維持します。(機能不良や外的要因 などにより)温度が設定値から外れた場合、アラームが作動して、自動的にバックアップ冷却シ ステムが稼働します。
サンプル追跡:IO-Link により統合されたバーコードスキャナにより、ラボシステム全体でサン プルを正確に追跡できます。システムで各サンプルの ID、保管場所、履歴が自動的に記録される ため、ラベル付け、追跡、取扱いにおけるミスを防止できます。EtherNet/IP により、この情報 は中央データベースにリアルタイムで更新され、サンプルデータへの迅速かつ正確なアクセスが 可能になります。
湿度および環境の監視:IO-Link を介して接続された湿度センサにより、薬品サンプルを試験す る培養器または制御環境の環境条件を監視します。PLC はセンサからのフィードバックに基づいて湿度レベルをリアルタイムで調整できるため、試験に最適な条件を確保し、試験結果に影響を 与える可能性のある偏差をなくすことができます。
分析における pH 制御:IO-Link を介して接続された pH センサにより、調製プロセスまたは試験 プロセスにおいて液体サンプルを適正な pH レベルに保持できます。PLC は緩衝液添加プロセス の調整や、酸/塩基の流れの自動制御により、適正な pH を維持します。pH 値が事前定義された しきい値から外れた場合、サンプルの完全性を確保するために直ちに是正措置が講じられます。
診断およびメンテナンス
機器診断:IO-Link センサは、エラーメッセージ、センサの状態、摩耗指標などの診断情報を PLC に継続的に送信します。システムでは、温度センサや pH センサなどの機器の状態を追跡し、メ ンテナンスが必要な場合にオペレータに警告メッセージを送信することで、機器の故障リスクを 低減します。たとえば、液体ハンドリングロボットが潜在的な詰まりや機能不良を検出した場 合、システムでは是正措置を求める通知を送信して、さらなるエラーを防止します。
リモート設定および校正:IO-Link により、オペレータは冷凍装置の温度設定値の調整や pH セン サの再校正など、さまざまな機器の設定をリモートで行うことができます。これにより、ダウン タイムと現場作業を最小限に抑え、ラボシステムを中断することなく円滑に運転できます。
データ分析および最適化
高度なデータ分析:IO-Link からのデータは、EtherNet/IP を介して SCADA システムに送信さ れ、リアルタイムで分析されて、温度トレンド、湿度変動、機器性能などの追跡に使用されま す。履歴データは、臨床試験結果のパターンとトレンドの特定に使用され、これにより、以降の 試験を最適化して、ラボ運転を強化できます。このデータに基づいた予測分析により、冷凍装置 や液体ハンドリングシステムなどの機器のメンテナンスが必要となる可能性が高い時期を予測で きるため、計画外のダウンタイムを回避し、全体的な効率を向上させることができます。
プロセスの最適化:EtherNet/IP からのリアルタイムデータにより、冷却設定の調整や湿度レベ ルの制御など、ラボ運転の継続的な最適化が可能になり、サンプルの保管と分析に最適な環境を 構築できます。自動化により、各パラメータを最適な範囲内に保持し、ヒューマンエラーを減ら して、試験結果の信頼性と一貫性を向上させることができます。
4-4 利点
効率の向上:監視/制御システムの自動化により、手動でのチェック作業が減り、データの精度が 向上し、ラボ運転が最適化されるため、臨床試験プロセスを円滑に運用できます。
ヒューマンエラーの削減:自動サンプル追跡、リアルタイムの環境制御、継続的な診断により、 ヒューマンエラーのリスクを最小限に抑え、臨床試験データの精度と信頼性を確保できます。
迅速な結果の取得:リアルタイムの監視と予防的なメンテナンスにより、機器の故障やプロセス の偏差による遅延をなくし、臨床試験プロセスを迅速化できます。
コスト削減:自動化と予知保全により、人件費を削減し、ダウンタイムを最小限に抑えて、臨床 試験プロセス全体のコストを削減できます。
法規制の遵守:継続的なデータロギング、環境条件の正確な制御、品質管理の自動化により、ラ ボシステムの GLP および規制基準への準拠を保証し、準拠違反のリスクを低減します。
5 結論
IO-Link テクノロジーは、ライフサイエンス産業のプロセスオートメーション、特に正確な測定デー タとリアルタイムの監視を必要とするアプリケーションに大きなメリットをもたらします。コスト効 率が高く、統合が容易で、正確な測定データを提供できるため、効率の向上、ダウンタイムの短縮、 製品品質の向上に役立つツールとして活用できます。ただし、以下に示すようなシナリオにおいて は、完全な相互運用性、拡張性、リアルタイムの処理性能を確保するために、PROFINET や EtherNet/IP などのより高度な通信プロトコルで IO-Link を補完することが推奨されます。
大量/高頻度のデータ収集
多数の機器から同時に高頻度のデータ収集または大量のデータ収集を行う必要がある場合、IOLink では帯域幅の制限という問題に直面する可能性があります。これに該当する例としては、バ イオプロセス制御において複数の温度または酸素測定値を高頻度で取得する場合や、医薬品製造 において複数の場所に配置された粒子カウンターや温度伝送器からデータを取得する場合、臨床 試験において複数の温度センサまたは pH センサから継続的にリアルタイムデータを取得する場 合などがあります。高帯域幅と高速通信機能を備えた PROFINET と EtherNet/IP は、このような 高頻度のデータ処理に優れており、大量のリアルタイムデータ伝送が必要な大規模システムに適 しています。
長距離通信
バイオリアクタ、大規模な医薬品製造施設、複数の建物から成るラボ施設などの場合、IO-Link の通信距離(最大 20 メートル(標準))では、遠隔の機器を接続できない場合があり、これが 制限事項になる可能性があります。 PROFINET と EtherNet/IP は、複数の IO-Link マスタを使用しなくても広域に分散配置された機器 を接続できるため、大規模システムでの長距離通信に適しています。
セーフティクリティカルシステム/緊急停止システム
IO-Link は冗長化に対応していないため、緊急停止システム(例:バイオプロセス制御用の緊急 冷却/圧力除去システム)や、医薬品製造/臨床試験で有害物質の取扱いを管理するシステムな ど、セーフティクリティカルシステムには適していません。 PROFINET と EtherNet/IP は、ネットワークの冗長化に対応しており、信頼性が高く中断のない 高速通信が求められるセーフティクリティカルな運転において高可用性を保証します。
過酷な環境または危険な環境
一部の製造エリアまたは臨床試験環境は、機器の物理的完全性が損なわれる可能性のある過酷な 条件(例:高温、腐食性化学製品)にさらされる場合があります。IO-Link 機器によっては、必 要な環境保護基準を満たしていない場合があります。 PROFINET および EtherNet/IP 対応機器は、過酷な条件で使用するための認証を取得しており、 高い保護基準(例:IP67、IP68、防爆認証)が求められる環境に適しています。
各アプリケーションの特定のニーズを慎重に評価し、IO-Link を補完的な通信技術と組み合わせるこ とで、メーカーはライフサイエンス産業の厳しい要求を満たす堅牢で将来性のあるオートメーション システムを開発できます。
※各メーカー様の商品ページ内容を記載しております。
変更になる場合もありますので各メーカー様のサイトをご確認ください。
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